ネット環境の整備によりERPのクラウド利用が増加

ERP(統合基幹業務システム)の導入においては、サーバーやネットワークなどの情報システムを自社で導入して運営する「オンプレミス」が主流でした。

しかし、現在ではネット環境が十分に整備されていることから、ERPで利用する情報システムはクラウドでも提供されるようになっています。

ERPがクラウド化されると、情報システムを構築するための機器を導入する必要がないため、オンプレミスと比べると革新的といえるでしょう。容易にERPを導入できることから、今後はERPのクラウド化が進むとみられます。

ERPとは?

ERPについて簡潔に説明すると「統合基幹業務システム」のことです。

企業内の各部署では、業務で使用されるシステムである「基幹システム」が運用されていますが、ERPを導入すると各部署で使用される基幹システムが一元管理されます。

つまり、複数の基幹システムが統合されたものであることから、「統合基幹業務システム」と呼ばれているのです。

ERPを利用することで、企業内の各部署が自社内の基幹システムにアクセスできるので、業務の効率化が見込めます。

ERPはクラウド化が進行中

市場調査会社の矢野経済研究所は2020年9月、ERP市場動向に関する調査の結果を公表しました。

同調査によると、2019年のERPパッケージ市場は1198億3000万円で前年比7.0%の増加となりました。その背景にあるのは「DX(デジタルトランスフォーメーション)」とみられます。

デジタルトランスフォーメーションとは、IT化の進行によって人々の生活が改善していくことを意味します。現在ではあらゆるシーンでデジタル化が進行していますが、それはERPの導入においても同様といえます。

ERPのデジタル化を示すデータとしては、ERPのクラウド化に関するものがあります。

ERPにおけるクラウド利用とは、情報システムを構築するためのサーバーやソフトウェア、ネットワークを自社で導入せず、クラウドサービスによって提供されているものを利用することを指します。

逆に、情報システムを構築するためのサーバー、ソフトウェア、ネットワークなどをそろえたうえでERPを導入することを「オンプレミス」と呼んでいます。

矢野経済研究所の調査結果を参照すると、2019年時点ではクラウド利用が約4割、オンプレミスの利用が約6割であるのに対し、2020年になるとクラウド利用とオンプレミスの利用が約半々になると見込まれています。

さらに、2021年にはクラウド利用とオンプレミスの利用割合が逆転し、クラウド利用が6割を超え、オンプレミスの利用は4割を切る見通しです。

ERPでクラウド型を導入するメリットは?

ERPの導入においてクラウドを利用するメリットは、情報システムを構築するための機器を自社で導入する必要がなく、コストを抑えられること、導入を迅速に行える点です。

また、コロナ禍においては非対面の状況で業務を行うことが推奨されていますが、それを実現するためにはERPのクラウド化が効果的となります。

ERPをクラウドで利用することで、ベンダーは不具合対応などのサービスをリモートで行えるほか、従業員はリモートワークを行いながらERPを利用できます。そのため、クラウドの導入はコロナ禍に適したものといえるでしょう。

ERPの売上規模はこれまで上昇を続けてきましたが、矢野経済研究所は、2021年のERP売上高は2020年比で減少すると予測しています。

その背景として、新型コロナの影響によって幅広い業種で業績が悪化するとみられ、それにともなってERPを導入する企業が減少することをあげています。

なお、2022年にはゆるやかながらERPの売上規模は上昇する見込みです。

参考:矢野経済研究所 ERP市場動向に関する調査を実施(2020年)
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2508

ERPのクラウドサービスの種類は?

ERPをクラウドで利用する場合、大きく分けると「SaaS」と「IaaS」があります。

SaaSとは「Software as a Service」の略語で、意味は「ソフトウェアで利用できる機能のうち、必要な分だけ利用できる仕組み」です。ベンダーが提供するERPのサービスをネット経由で利用できるタイプで「パブリック型」と呼ばれることがあります。

また、IaaSとは「Infrastructure as a Service」の略語で、意味は「コンピュータを利用するためのネットワークインフラをクラウドで利用できるサービス」を指します。なお、この場合のネットワークインフラとは、サーバー、ストレージなどのハードウェアのことです。

言い換えれば、オンプレミスの環境をネット経由で利用できる形となります。ERPをIaaSで利用すると、オンプレミスと同様にカスタマイズが可能です。この形態は「プライベート型」と呼ばれることがあります。

ERPのサービスの多様化 IoTとの連携

ERPはクラウドと連携することによって情報システムの導入を必要としないサービスを提供できるようになりました。

そのほか、ERPと連携ができるものとして「IoT」があります。IoTとは「モノのインターネット」のことで、モノ自体がインターネットに接続するものです。

IoTを活用した製品の例としては、「IoT冷蔵庫」があります。IoT冷蔵庫を利用すると、冷蔵庫にどんな食材が入っていて、食材の賞味期限はいつまでか、という情報をスマートフォンで確認できます。

IoT冷蔵庫はユーザーとしても利便性が高いほか、冷蔵庫を提供した企業側としてもユーザーがどのように冷蔵庫を利用しているか、というデータを収集できます。

収集できるデータとしての一例をあげると、ある家庭で使用している冷蔵庫の温度データがあります。このデータをERPで活用して収集・分析することで、庫内の温度をできる限り一定に保つ冷蔵庫の開発が可能となるでしょう。

ERPとIoTを連携させることによって、多くのデータを収集しながら新たなサービスの開発につなげられます。

ERPはスマートフォンでも利用可能

ERPは今後、スマートフォンによる利用が拡大するとみられます。ERPをスマートフォンで利用するメリットは、外出先にいながら事務的な業務を行えることです。

例えば、経費の申請や勤怠入力などの業務を行う場合、基本的には会社で処理する形となります。なぜなら、多くの場合、経費申請や勤怠入力の画面は、社内の情報システムに接続されているパソコンでなければ表示されないためです。

その点、ERPをスマートフォンで利用できれば、社内の情報システムに直接アクセスできるため、スマートフォンの画面から事務的な業務を行えます。

現在ではリモートワークで業務を行う人が増えていますが、スマートフォンでERPを利用すれば、場所を問わずに業務を効率的に行うことが可能となります。

まとめ

ERPはオンプレミスとして提供されるよりも、クラウドで提供されるケースが増えています。情報構築の機器を自社で導入する必要がなく、コストを抑えられることがその理由といえます。

そのため、クラウドでERPを利用する需要が増加しています。社内の基幹システムに容易にアクセスできることによって、業務の効率化が期待されます。

(画像は写真ACより)