SAP社のRPA製品について

SAP社は、2018年11月にフランスのRPAソフトウェア開発会社のContextor SAS社を買収し、RPAやAIを組み込んだシステムの自動化を目指していました。

この買収によって両社の技術を統合し、2019年5月には新しいRPA「SAP Intelligent Robotic Process Automation」を発表し、今では一般に公開されています。

SAP社が、多くの注目を集めているRPA市場に本格的に参入したことで、この市場は大きな変革を迎えています。

では、SAP Intelligent RPAにはどのような特徴があり、どのような点が進化しているのでしょうか。ここでは、SAP Intelligent RPA製品についてと、考えられる作業の自動化、事例などを紹介していきます。

急成長する基幹業務システムERP

デジタルクラウド化が進む中で注力されているのがERP(Enterprise Resources Planning)「エンタープライズ・リソース・プラニング」で、ヒト・モノ・カネの業務系データの活用が求められています。

これらの基幹業務をデータ化し、生産性を高めるためのシステムが、ロボットによる業務自動化のRPA(Robotics Process Automation)です。

RPAでできる内容は、多岐にわたります。

具体的な適用業務としては、帳簿入力や伝票作成、ダイレクトメールの発送業務、経費チェック、顧客データの管理、ERP、SFA(営業支援システム)へのデータ入力、定期的な情報収集など、主に事務職の人たちが携わる定型業務があげられます。(総務省より)

組織の内部で発生する膨大なデータ処理を、ロボット、IoT、ビッグデータ、AIなどを活用して自動化を図ることで、少人数でも効率的な作業を実現し、企業の成長への効果も期待できます。

「ガートナー ジャパン株式会社 RPAに関する調査結果」によると、2017年の国内調査では14.1%の企業が導入済み、6.3%が導入中、19.1%が導入を検討中となっています。市場規模は2017年度が31億円、2021年度には100億円規模になると予測されている大きな市場です。

SAP Cloud Platformとは

SAP社は、SAP Cloud PlatformにContextorのRPA技術を統合したアプリケーションを提供しています。Contextor SAS社を買収した当時、ERPソフトによるビジネスプロセスを3年で50%自動化すると発表していました。

Contextor SAS社は、RPAとRDA(ロボティックデスクトップオートメーション)ソフトウェアの研究開発を手がけるフランスの小規模企業です。テクノロジーを駆使して繰り返しの定型業務を削減し、ビジネスプロセスを効率化するサービスを提供していました。

アプリケーション内外をまたいだ操作も自動化する特徴があり、統合によりSAP製品はもちろん、SAP以外の製品とも連携しながら自動化することが可能になります。

では、具体的にどのような作業が自動化できるのでしょうか。

SAP Intelligent RPA、エンドツーエンドを自動化

SAP Cloud Platformは、紙ベースの業務をデジタル化するものですが、AIや機械学習など、知的なエンジンを組み合わせ、業務プロセス全体を合理化していくプラットフォームです。部分的な最適化を回避して、緊急性などを評価し、指標を作成します。それによりパフォーマンスの改善にもつなげていきます。

SAP Intelligent RPAは、エンドツーエンドの作業プロセスを完全自動化するものと、部分的な自動化を使い分けることができます。つまり、人の監視のもとで、ロボットが自律的に作業を実行するUnattended RPA、人の作業にロボットがアシスタントとして特定の作業を実行するAttended RPAの2つの形態が利用できます。

ある欧州の保険会社では、カスタマーサービスにSAP Intelligent RPAを導入し、SAP Conversational AIを活用して顧客から保険に関する問い合わせに対応しています。それによって顧客は時間にとらわれずに連絡することが可能になります。

データ処理とチャットボットの安定性

また、メールやファイル共有などで請求書を受け取るときは、マシン・ラーニングである「Leonardo Machine Learning Foundation」を利用して読み取り、S/4 HANAと呼ばれているインメモリデータ処理プラットフォームへの保存まで、すべて自動で行います。

さらに、SAPライセンスを持ったPCが故障したとき、ITサポートチームへの発注を自動化した例もあります。故障したPCの写真を撮影し、チャットボットで送ると機械学習によってPCの機種を認識します。データを読み取り、ユーザーに代わって注文書の作成から発注まですべて自動で行うことができます。

また、SAPではチャットボットに注力して継続的に投資しているため、RPAの作成や修正など、土台となるシステムに変更があっても、安定した処理が行われます。SAPのボット構築プラットフォームを利用している開発者は6万人以上、開発されたボット数は12万以上となっています。

まだまだ進化する、SAPのRPA強化

昨年リリースしたばかりのSAP Intelligent RPAですが、SAP社では継続して開発が進められています。

ほかにも、「SAP Intelligent RPAコンテンツストア」を立ち上げる予定だとしています。SAP開発の製品だけでなく、パートナーのコンテンツなどもストア上で提供していく予定です。パートナーとしてIBM、Ernst & Young、Deloitteなど6社とすでに提携しています。

様々なシステムを組み合わせることで、柔軟で広範囲の作業をカバーすることができるSAP Intelligent RPA。導入するためには、まず企業の業務プロセスのどこに課題があり、どう自動化していくべきかを検討していく必要があります。

企業によって生産ライン、販売ラインなど様々な部門や業務プロセスがあり、導入後も効果を解析しながら継続的に修正していくことなど、決定前にしっかりと見極めることで導入後の活用法と効果が変わってきます。

(画像はPixabayより)