2025年はよく重要な節目と見られる年号で、経済産業省が発表したITシステムへの投資に関する「2025年の崖」や、厚生労働省が発表した介護費や医療費が急増するという「2025年問題」などがあります。

SAPに関しても2025年は重要な意味を持っており、ユーザー企業が対策を練っておく必要のある節目の年号です。今回は、この「SAPの2025年問題」について、背景や対応方法、最新動向などを解説していきます。

SAPの2025年問題とは何か?

SAPの2025年問題とは、SAP ERPのメインストリーム・メンテナンスが2025年で終了してしまう問題のことです。国内でSAP ERPを導入している企業は2,000社にのぼるとも言われており、その影響の大きさが懸念されています。

なお、メインストリーム・メンテナンス終了後も、限定的なサポート(カスタマー・スペシフィック・メンテナンス)を受けることはできます。しかし、基幹業務に直結する重要なシステムであり、とくに安定した運用を確保する必要があるため、それだけで十分かというと疑問が残るかもしれません。

SAP社は、対応方法として新製品のSAP S/4HANAへの移行を推奨しています。しかし、SAP S/4HANAへの移行は単なるバージョンアップとは違い、大きな手間やコストがかかると考えられます。

SAP ERPのサポート終了にある背景

1992年にSAP R/3がリリースされて以降、現在のSAP ERPは20年以上にわたってバージョンアップが繰り返されてきました。しかし、機能が充実する一方で、システムの肥大化・データ構造の複雑化によりリアルタイム性が損なわれてきました。

この問題を解決すべく開発されたのがSAP S/4HANAで、高速なインメモリーデータベースのSAP HANAを専用データベースとすると同時に、複雑化したデータ構造がシンプルなかたちで再構築されています。

SAP S/4HANAは、新しい技術が取り入れられたSAP ERPシリーズとは別物の製品と考えたほうがいいでしょう。SAP社はリアルタイムなシステムを志向しており、この新製品への切り替えをユーザー企業に促しているわけです。

SAP社がサポート期間の2年延長を発表

2020年2月、SAP社は、SAP ERPをはじめ「SAP Business Suite 7」のコアアプリケーションのメインストリーム・メンテナンス期間を2年延長し、2027年とすることを発表しました。また、SAP S/4HANAの移行が期限以降までかかる場合には、追加料金を支払うことでさらに2030年まで延長させることも可能です。

期限が迫っているなか、これは導入企業にとってはプラスのニュースと言っていいでしょう。ただし、猶予期間が長くなったとはいえ、問題が根本的に解決されたわけではありません。いずれにせよ、導入企業はできるだけ早急に対応方針を固める必要があります。

3つの対応方法とメリット・デメリット

SAP ERPの導入企業ができる対応方法を大きく分けると、「現行システムをそのまま使い続ける」「SAP S/4HANAに切り替える」「SAP以外のシステムに切り替える」の3つが考えられます。それぞれについて見ていきましょう。

現行システムを使い続ける

2027年以降も現行システムをそのまま使い続ける場合、SAP社のカスタマー・スペシフィック・メンテナンスを利用するか、SAP社のサポートを打ち切り第三者保守サービスに切り替えることになります。

この対応方法を選択した場合、システム切り替えが不要となるため、当面のコストを大きく抑えることができます。また、次期システムへの切り替えを自社でコントロールできるため、余裕を持ってじっくりとプロジェクトを進めることが可能となります。

一方で、システムの現状維持はできるものの、機能を拡張していくことができなくなります。SAP ERPが持つリアルタイム性の面での欠点も抱え続けることになるため、ビジネスへの悪影響が出てしまうことが懸念されます。

SAP S/4HANAに切り替える

2027年までにSAP S/4HANAへの切り替えを進めていく場合、できるだけ早急に移行計画を策定して、プロジェクトを進めていく必要があります。また、多くの企業で移行が検討されることになるため、SAPコンサルタントの人材確保を確実に行っておく必要があります。

この対応方法を選択した場合、最新のリアルタイム性の高いシステムを利用することで、ビジネスへの好影響を期待できます。一方で、移行プロジェクトは大規模となるため、大きな手間とコストがかかることが予想されます。

SAP以外のシステムに切り替える

メインストリーム・メンテナンスが終了するまでに、SAP以外のシステムに入れ替えてしまう方法も考えられます。まったく新しいシステムを導入することになるので、こちらも大きな手間とコストがかかると考えられます。

もしSAP以上に自社に適合したシステムに切り替えられれば、ビジネスへの好影響を期待することができます。一方で、新しいシステムへの切り替えがエンドユーザーの負担になるなど、ビジネス面で逆効果となる可能性もあります。

ビジネス刷新のチャンスにもできる

「SAPの2025年問題」はベンダーの事情によるもので、ユーザー企業としては仕方なく負担させられるコストという側面もあります。しかし、それを単なるコストで終わらせるのではなく、いかにビジネスに還元していくかが重要です。

例えば、SAP S/4HANAへシステムを移行すれば、リアルタイム性の高い情報を一覧できるようになります。これをビジネスにうまく活かせるように、業務プロセスの見直しを並行して行うこともできるはずです。

もちろん「SAPの2025年問題」を乗り切るのは大切なことですが、それだけが目的になってしまってはいけません。ビジネスを向上させる良い機会と捉えて、ポジティブな気持ちで取り組んでいくことをおすすめします。

(画像は写真ACより)

▼外部リンク

SAP社のプレスリリース
https://news.sap.com/japan/