ERPのクラウド化による市場成長

ERPのクラウド化がすすみ、あらゆる業界の基幹システムとして急成長しているERP市場。

これまで大企業でしか導入できなかったERPシステムですが、外部サーバーを利用してクラウド上でシステムを構築・管理できるようになったことにより、中堅企業や中小企業などでも導入・運用がすすめられています。

ここからは中堅・中小企業のERPシェアはどのような状況か、2つのタイプのシステムはどちらが多く利用されているのか、リサーチなどを通してみていきましょう。

ERPサービスはパッケージと自社開発

ERPとは、Enterprise Resource Planning(企業資源計画)の略で、財務会計、売上、在庫管理などの社内業務をシステム化したものです。

これまで部門別に行われていたデータを最適化し連携することで、業務効率化やデータ活用を実現し、企業成長につなげることを目的としています。

ERPサービスは大きく分けてハード・ソフトウェアを社内に設置し、システムを構築・運用する「オンプレミスERP」、クラウド上で構築・運用する「クラウドERP」の2つがあります。

また、ERPは提供される仕組みによって、大企業などに最適な、設定の自由度が高いIaaS型、中堅・中小企業に最適な、構築されたシステムを利用するSaaS型などに分けることができます。

サービス内容はERPベンダーによって様々ですが、あらかじめ基幹システムが標準化されたものを提供する「パッケージ型」と、社内で行う「自社開発型」があります。

中堅・中小企業におけるERPシェア率

IT市場専門調査会社・ノークリサーチが2018年に、中堅・中小企業向けに実施したERPシェア動向の調査レポートがあります。

それによると、ERPを導入している企業のうち、年商5億円未満の小規模企業では、自社開発のERP導入はみられません。

中小企業では、年商5~50億円規模が16.0%、10億円~20億円規模が21.4%、20億円~50億円規模が28.6%となり、年商規模が大きくなるにつれ自社開発が増えてきます。

中堅企業になると、年商50億円~100億円規模が16.7%、100億円~300億円規模が14.0%、300億円~500億円規模が7.2%となり、こちらは規模が大きくなるにつれ自社開発が減っていきます。

パッケージ型の市場シェアと評価

また、中堅・中小企業全体で「導入している主なERP製品・サービスの運用形態」をみると、「社内設置のパッケージ型」が50.4%、「データセンター設置のパッケージ型」が25.2%のシェア率となっています。

また、矢野経済研究所が2019年に国内のクラウドERPパッケージ市場について調査したところ、利用率は2017年では22.4%、2018年では28.2%、2019年は35.8%であり、着実に増加しています。

2018年のERPパッケージライセンス市場は1,123億7,000万円で、前年比4.4%増となっています。

企業のIT導入をサポートするキーマンズネットの調査によると、ERPの導入済み企業に対して「とても満足している」との回答は3.1%、「まあ満足している」が50.3%で合わせると53.4%。

「やや不満がある」31.4%、「とても不満がある」が15.2%で、合わせると46.6%となり、満足している企業がやや上回る形となっています。

パッケージの強みは「データ連携」、「プログラム不要」、「業種別対応」などがあげられています。一方で「プログラミングをしないとデータ連携できない」などのケースも発生しており、連携による柔軟性が評価される一方で、ERPの認知度・導入率が高まり、より高度な機能を求める声が増えていると考えられます。

アドオン開発について

パッケージ型のERPには、「アドオン開発」があり、あとから機能を増やすことができます。独自開発のように、始めから柔軟に対応できなくても、企業のニーズに合わせ最適化していくことができます。

アドオン開発で多いのが、「帳票関連」「ダッシュボード」「連携」などがあります。「帳票関連」については、見積書や請求書、財務報告など種類は数千種類になるとも言われています。

「ロジック」など、ユーザー企業独自のこだわりがある場合は、開発は必須になります。

一方で、アドオン開発を行うことは、システムが複雑化するため管理が難しくなる可能性があります。

開発にかける時間とコストも大きな負担になってくるため、ERPシステムを導入する前に、導入金額、改修・開発、ランニングコストなどを最小限に抑えられるよう、熟考する必要があります。

アドオン開発を最小限に抑えることは、システムがバージョンアップしたときの様々な問題を回避することにもつながります。特に業務プロセスの連携においては、残すべきシステムやデータも出てきます。

だからといって、アドオン開発をまったく行わないことも正解ではありません。

時代の変化に対応していかないと、作業の見直しや改善、新たなデータ、新しい戦略といった、積極的な経営につながらない可能性があるからです。

また業務プロセスをERPパッケージに合わせてしまうのも、企業が独自に持つ商習慣を維持できなくなる可能性があります。

企業の成長や時代の変化に合わせ、業務プロセスを大きく変えることなく構築していくことが、最終的に開発期間の短縮、コスト削減につながります。

経済産業省のDXガイドライン

経済産業省では、企業の将来の成長、競争力強化としてDXガイドライン(デジタル・トランスフォーメーション・ガイドライン)を設け、企業のデジタル化、IT化を推進しています。

業務効率のシステムを構築しなければ、2025年以降は年間最大で12兆円の経済損失につながると指摘しており、ガイドラインを設けてDXの推進を行っています。

同省の調べによると、中小企業のIT導入率は全体の3割で、DXの取り組みは課題があります。「コストが負担できない」が30.6%、「導入の効果が分からない」が29.6%、「従業員がITを使いこなせない」が21.5%となっています。

課題をどのように克服し、コスト削減につながる新しい製品開発を行っていくべきか、ERP市場がどのように変化していくのか、注目していきたいところです。

(画像は写真ACより)