SAPのERPパッケージは、特定の業務に対応したさまざまなモジュールによって構成されています。このモジュール群を大まかに分類すると、ロジスティクス系・会計系・人事系・分析系等の区分に分けられます。

これらのモジュール群が単独に機能するのではなく、リアルタイムで連動して動くのがSAPのERPパッケージの大きな特徴です。とくに高速なインメモリデータベースのSAP HANA上に展開される最新のSAP S/4HANAは、このリアルタイム性がさらに向上しています。

今回は、ロジスティクス系のモジュール群にスポットを当てて、その機能の全体像を解説したうえで個別のモジュールについても簡単に紹介していきます。SAPのERPソリューションに興味がある人は、ぜひ参考にしていただければと思います。

ロジスティクス系モジュールの全体像

ロジスティクス系の業務は、原材料・商品の購入、製品の生産、在庫の管理、商品・製品の販売といった一連のプロセスを指します。企業活動における中心となる業務であり、非常に重要なプロセスです。

これらの業務に対応するモジュールには、MM(在庫・購買管理)、PP(生産管理)、QM(品質管理)、LE(物流管理)、SD(販売管理)、CS(得意先サービス)、PM(プラント保全)、PS(プロジェクト管理)等があります。これらの大まかな関係は、次のようなかたちです。

まずMMが原材料・商品の購入の機能を担い、それらの在庫状況を管理します。原材料を消費して製品を生産する部分はPPが管理し、品質管理をQMが担当します。原材料・商品・製品の倉庫・工場における保管・移動・出荷に関してはLEが担います。

製品在庫をリアルタイムに把握しながら販売・出荷を行うのがSDで、得意先のアフターサービスを担うのがCSです。また、一連のプロセスに使用される設備の管理プロセスはPMで行い、プロジェクトの管理にはPSが使用されることになります。

8つのモジュールを個別解説

ロジスティクス系モジュールの全体像を踏まえて、今度はそれぞれのモジュールの基本機能についてもう少し細かく見ていきましょう。それぞれのモジュールで使用されるどのデータが連動しているかを意識すると、より理解が深まっていくと思います。

MM(在庫・購買管理)

MMでは、まずは購買依頼に基づいて、生産・販売のための原材料・商品を仕入先に見積依頼・発注を行い、調達した原材料・商品の入庫を管理します。そして、入庫したものを買掛金として計上のうえ、仕入先からの請求書と発注・入庫状況を照合して支払いを行う部分も管理します。

また、原材料・商品の入庫に際しては、入庫日や仕入金額を把握したうえで数量の管理を行います。生産工程への投入や販売による出荷に伴う移動なども含めて、在庫状況の管理を行います。

PP(生産管理)

PPは、生産工程に基づいてMRP(資材所要量計画)の計算を行い、生産に必要な原材料等の所要量を把握するところから始まります。これに基づいて、在庫状況も踏まえながら調達する必要のある原材料の数量を把握し、MMの購買依頼につなげることもできます。

製造にあたっては、原材料の生産工程への投入から製品の生産までを管理し、それらの進捗状況や完成品の数量を把握します。完成品を倉庫に入庫すると、MMの在庫管理へとつながり、製品の在庫数量が更新されていきます。

QM(品質管理)

QMでは、調達した原材料・商品、生産した製品の品質検査を行うことができます。入庫処理を行うタイミングでの品質検査、倉庫における品質検査、返品されたタイミングでの品質検査によって、一定の基準を満たしているかどうかをチェックすることができます。

LE(物流管理)

LEでは、仕入先から原材料・商品を調達し、製品を生産のうえ、得意先に販売するという一連の流れの中で、モノの移動を管理します。倉庫内の棚レベルで在庫管理を行う倉庫管理や、適切な輸送をサポートする輸送管理、出荷処理の自動化・効率化ができる出荷管理等の機能があります。

SD(販売管理)

SDでは、販売に関する一連の業務をサポートします。まずは得意先からの見積・受注に基づいて、出荷伝票の登録を行い、倉庫への出荷指図を行います。出荷後には、請求書を発行して売掛金を計上するとともに、代金回収まで管理します。

また、SIS(販売情報システム)というコンポーネントが用意されており、得意先や品目、営業所等の切り口で統計情報を柔軟に分析できます。BIツールを利用すれば、ロジスティクス回帰分析・アソシエーション分析・クラスター分析等、さらに効果的なデータ分析も可能となります。

CS(得意先サービス)

CSでは、製品を得意先に納品した後のアフターサービスの管理を行います。保守契約に基づくような定期的な点検作業と、問い合わせ対応・故障発生時の修理といった単発の保守作業の両方に対応することができます。

PM(プラント保全)

PMは、企業における業務活動で使用される設備を保守管理するためのモジュールです。設備の情報を管理したうえで保全計画を策定し、それにしたがって保全作業を進めていきます。また、故障が発生した設備への対応についても管理することができます。

PS(プロジェクト管理)

PSは、企業におけるプロジェクトの計画策定・予算管理・進捗管理などを行い、予定された予算と時間の中でプロジェクトが完了できるようにサポートします。他のモジュールとも連携させながら管理を行うことで、プロジェクト実行を効率化します。

モジュール間のつながりを意識しよう

今回は、SAPのERPソリューションにおけるロジスティクス系モジュール群の概要を紹介してきました。機能ごとに細かくモジュールが分かれていますが、それぞれの主要機能とつながりを押さえることで全体像が理解できると思います。

ロジスティクス系の中でもさまざまなつながりがありましたが、例えばロジスティクス系と会計系、ロジスティクス系と分析系というふうに、区分を超えても連携しているのがSAPの大きな特徴であり強みです。

SAPのERPソリューションに含まれるすべての機能を完全に把握するのは難しいですが、ロジスティクス系に限らず、他の区分の概要についても理解しておくことをおすすめします。全体を把握することで、個々の機能が持つ位置づけについての理解が、より深まっていくはずです。

(画像は写真ACより)