基幹業務システムを利用するうえで、マスターデータを適切に管理することはとても重要です。とくに企業の規模が大きくなればなるほどマスターデータは複雑になり、組織内で統合的に管理していく必要性が高まっていきます。

今回はこのマスターデータという部分に焦点を当てて、ERPパッケージにおけるマスターデータの位置づけからSAP社が提供するソリューションまで、基本的なところを解説していきます。

基幹業務システムに欠かせないマスターデータ

基幹業務システムでは、日々発生する取引に対応した取引データを作成します。例えば、販売したという取引であれば、「どの商品を、いくつ、いくらで、どの取引先から、いつ受注して、いつどの住所に出荷した」というようなデータです。

ビジネスでは同じ取引先への販売、同じ商品の販売は繰り返し発生するものです。取引の度にそれらの情報すべてを手入力するのは手間やミスが増えてしまいます。通常、こういった繰り返し使用される基礎情報は取引データとは別に保存されていますが、これがマスターデータと呼ばれるものです。

つまり、販売に関する取引データを作成するのであれば、取引先や商品に関する情報は得意先マスターや品目マスターから選択してセットするという流れになります。こうすることで手間やミスが減ることになり、加えて、後に集計・分類をする際にもスムーズに作業ができるようになります。

マスターデータをめぐる課題

部門ごとに別の業務システムが取り入れられている場合がしばしばあります。この場合、マスターデータという観点から見ると、同じ情報を部門ごとにバラバラに持っている状態になり、組織全体では非効率になってしまっていることがあります。

ここではわかりやすく単純化した例として、さまざまな商品を仕入れてそのまま販売するという事業を想定してみてください。もし、仕入れを行う調達部門と販売を行う販売部門の業務システムが完全に分離しており、商品に関する品目マスターを別々に持っていたとしましょう。

すると、販売する商品と仕入れた商品が関連していないため、在庫がどれだけあるかをスムーズに把握できなくなってしまいます。把握するためには調達部門・販売部門間で、仕入数と販売数を出力して渡すといったかたちで、別途伝達するという手間が発生してしまうわけです。

また、商品別に売上金額と仕入原価を把握して利益率を確認するといった場合にも、両者を関連付けて集計・分類を行う必要があります。このときにも、販売する商品と仕入れた商品の関連付けができていないと、やはり一苦労することになってしまいそうです。

このように、マスターデータは部門ごとに別々に管理すると、確かに部分最適化は図れるかもしれませんが、組織全体を考えると非効率が発生することがあります。この点、一気通貫で業務を管理できるERPパッケージは、統合的なマスターデータ管理が可能になるというメリットがあります。

主要なマスターデータ

ここで、SAPのERPパッケージを導入する場合に、どのようなマスターデータが必要になるかを見てみましょう。ここでは先ほどと同様に、さまざまな商品を仕入れてそのまま販売するという単純な業務プロセスを考えていきます。

もう少し掘り下げると、仕入先から商品を仕入れて検収を行い、仕入先の指定する銀行口座に支払いを行うという業務があります。そして、得意先に商品を販売して出荷を行い、得意先から銀行口座に入金してもらうという業務もあります。

これらの業務を行う裏で、ERPパッケージのなかでは、商品の検収を行ったタイミングで仕入計上の会計仕訳が、商品の出荷を行ったタイミングで売上計上の会計仕訳が自動計上されていきます。

これらのプロセスのなかで必要となるマスターデータとしては、仕入先マスター・得意先マスター・品目マスター・銀行マスター・勘定科目マスター等が挙げられるでしょう。こういった主要マスターデータは、モジュールを超えてさまざまなところで使用されることになります。

SAPのマスターデータ管理ソリューション

SAP社は、マスターデータを組織全体で統合的・効率的に管理するために、SAP Master Data Governance(SAP MDG)というソリューションを提供しています。SAPのERPパッケージの機能を拡張するとともに、非SAP製品も含め複数のERPパッケージのマスターデータを統合することも可能です。

例えば、グローバルに展開する企業の場合、各国の拠点ごとにERPパッケージが導入されており、マスターデータが各国で別々に管理されているようなケースもあるでしょう。こういったところにSAP MDGを導入することで、バラバラなマスターデータを共通化することができるわけです。

事業が拡大すればするほど、マスターデータは複雑化していき、統合的に管理することが難しくなっていきます。しかし、逆に考えれば、マスターデータの課題をクリアすることは、ビジネス価値向上を実現するための手段として有効である可能性が高いと言えるかもしれません。

企業におけるマスターデータ管理

今回は、マスターデータ管理という部分について、基本的なところを解説してきました。どんな業務プロセスにおいても、必ずマスターデータは出てきます。今回紹介したマスターデータはあくまで一握りに過ぎませんが、大きな考え方の部分を理解しておいていただければと思います。

部門ごとに業務内容が違うため、マスターデータをどう管理したいかも異なります。そういった要望をうまくまとめながら、マスターデータを組織全体でどう管理していくかというのは、企業にとって大きな課題です。

この課題をクリアするための手段として、SAPのERPパッケージやSAP MDGといったマスターデータ管理ソリューションが有効なこともあるはずです。組織全体で一貫したマスターデータ管理を実現するツールの1つとして、頭に入れておくといいかもしれません。

(画像は写真ACより)