製造業を営む企業にとって、適切な生産管理を行うことは欠かせません。生産管理は単に製品を作るだけでなく、業務フローの変革や技術改善も行うため、企業価値を向上させるうえで非常に重要なプロセスと言えます。

SAPのERPパッケージにおいては、PP(生産管理)モジュールを中心にこの生産管理プロセスの機能をサポートしています。PPモジュールは見込生産や受注生産といった生産形態に対応しており、企業の業務プロセスに合わせて導入することが可能です。

今回は、生産管理プロセスに注目して、生産管理システムが何の目的で導入されるかという基本の部分を解説したうえで、SAPのERPパッケージにおける生産管理プロセスの概要について具体的に見ていきます。

生産管理システムの目的

生産管理プロセスは、企業の販売戦略や需要予測等に基づいて生産計画を立案するところから始まります。この計画に従って適切な進捗管理を行いながら製造を行い、製造の実績を分析して生産工程に有用なフィードバックを提供します。

生産管理システムは、これらの一連のプロセスをサポートすることで利益率の向上を図ることができます。具体的には、生産計画の精度向上・原材料や製品の在庫圧縮・生産効率の改善といったことが期待できます。

まず、生産計画を立てるには複雑な計算が必要になりますが、システムを使って自動計算をすること計画立案に係る時間を削減することができます。これによってより細かく計画立案を行えるようになり、精度向上が可能となります。

次に在庫については、生産計画の精度が向上することで過不足ない在庫を持つことが可能となります。無駄な在庫を持たなくなることで、コストの圧縮が実現できます。

最後に生産効率に関してですが、システムを使えばより効果的な分析をスピーディに行えるようになります。これによって、生産性向上を阻害している原因を把握して対策を打つことが可能となるわけです。

SAPの生産プロセスの概要

生産管理システムのメリットを紹介しましたが、これを踏まえてSAPのERPパッケージにおける生産プロセスの概要を紹介していきます。大きく機能の流れを分けると、生産計画・生産管理・製品原価管理というかたちになります。

生産計画と生産管理はPPモジュールにおいて、製品原価管理はCO-PC(製品原価管理)モジュールにおいて機能が提供されています。それでは、それぞれの機能について概要を見ていきましょう。

生産計画

生産計画では、販売予測や需要予測に基づいて、いつどの製品をいくつ生産する必要があるのかという基準生産計画を立てます。これに基づいて、生産に必要となる原材料の所要量をMRP(所要量計算)という機能を使って詳細に自動計算することができます。

原材料の所要量が分かれば、その時点での在庫量を踏まえて、いつまでにどの原材料をいくつ発注しなければいけないかということも分かります。これに基づいて、購買依頼がMM(購買・在庫管理)モジュールに飛んでいき、調達部門において仕入れが実行されます。

生産管理

MRPを回すと、製品を作るための手順が登録された製造指図が生成されます。この製造指図に従って原材料を投入したり、作業員が割り当てられたりする等、実際の生産活動が行われていくことになります。

製造指図には、計画において予定されている原材料の数量や作業時間等、予定原価に関する情報が設定されています。実際に製造をするなかで、製造指図には予定に対応する実績値が登録されていくようになっています。

製品が完成して製造が完了すると情報がMMモジュールに連携され、完成品が製品として在庫計上されます。これとともに関連する会計仕訳が自動生成され、FI(財務会計)モジュールにも連携が行われます。

製品原価管理

月末時点で完了した製造指図については、差異計算が行われます。製造指図では原材料の数量や作業時間等に関する実績値が登録されていますが、これをあらかじめ設定されている標準値と比較して差異を把握するというかたちです。

標準値と実績値の差異を把握して分析することで、生産過程のどこに問題があるのかという非効率の原因が分かってきます。これを現場にフィードバックすることによって、生産効率を改善が可能となるわけです。

なお、設定にもよりますが、製造指図の決済を行うと、これらの差異は製品在庫における評価金額・単価の更新、差異に関連する会計仕訳の計上といったかたちで、MMモジュールやFIモジュールに連携される仕組みになっています。

経営とつながった生産管理を

SAPのERPパッケージにおける生産プロセスは、販売予測や需要予測というところに始まり、他のモジュールと連動しながら機能しているのが特徴です。これによって、リアルタイムに限りなく近い状況で、適切な生産活動を行える環境を作ることができます。

生産管理は製造業を営む企業にとって非常に重要なプロセスであり、経営と密接に連携して生産管理を行うことのメリットは大きいと言えるでしょう。企業が生産管理を見直すうえで、経営と生産が一体化するということは、今後ますます重要なポイントとなっていくかもしれません。

(画像は写真ACより)